炎上の妊婦加算、批判即廃止は性急?“妊婦が負担”の代案議論と“妊婦を診ること”評価の意義周知を

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診療報酬の妊婦加算、批判受け1年足らずで見直しへ

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炎上の要点は「診察の質変わらない」「なぜ妊婦が負担」

妊婦加算がまずいのは、「問診票の『現在妊娠していますか』に『はい』で答える」「自分で窓口に申し出る」ことで、大して妊婦であることへの配慮もされずいつもと変わらない(ように感じる)診察をされて、高い金額が請求されてしまうこと。

太字の部分が患者感情としては大事なことで、馬鹿正直に申告して支払いが増えるなら妊娠してることを黙っておこう、ということになりかねないわけです。

 

特に問診票というのは、妊娠の有無に関わらず、その人の既往病、喫煙歴、家族の病歴などを知ることで検査や投薬内容に反映させる必要があるから書くように促されているもの。

妊娠中というのはとりわけ体調に厳重な管理が必要なのは言うまでもありません。医療の現場としても、患者側が思うよりも相当神経をすり減らして診療に臨んでいます。確認を怠って妊婦さんに飲ませてはいけないお薬(禁忌といいます)を処方してしまい、医療事故などあっては大変です。

そうした現場の“厳戒態勢コスト”を評価する点数として平成30年4月の点数改定で新設され、妊婦への診療を少しでも医療機関側へアプローチさせたい狙いでした。そこが「少子化対策を謳う国策と矛盾している」「妊婦税だ」などと炎上してしまったのですから、まさに本末転倒です。

ただ、妊婦さんを責めるわけにもいきません。産婦人科に限らず内科や歯科でも加算される妊婦加算。先に述べた通り、受診しても医療が激変したとも思えず、「なぜ妊婦だけ」感もあるでしょう。

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同じ性格の乳幼児加算は“負担がないから”騒がれなかった

お子さんをお持ちの方なら会計後に貰う明細書に書いてあるのを見たことがあるかもしれません。

乳幼児加算は妊婦加算よりもかなり前から存在する診療報酬で、初診・再診料や検査、手術等の規定の点数に加算される点数です。

点数の性格としては妊婦と同様、「小さな子どもを診る態勢を評価した点数」です。

特に一部の検査や手術など、子どもが嫌がって暴れることが予想される項目について大きめの加算点数が設定されていて(手術は基本点数の100分の100を加算、つまり2倍に!)、実態に応じた評価と言えると思います。

 

では、この乳幼児加算がこれまで大きく話題にならなかったのはなぜか?

「金銭負担が手厚くされるべき患者に課される」ことで批判の的となった妊婦加算と照らし合わせて見えてくるのが、各市町村の子ども医療費助成制度です。

人口減少の昨今、世帯転入を目論む各自治体が「病院での自己負担を減免する」制度を次々に制定するようになっています。この結果、乳幼児加算で点数自体は高くなっても、子ども医療費助成制度により窓口での支払いは少額で済んでいる(※一旦窓口で全額払ったあと申請で一部戻る償還払いの制度を取る自治体もあります)ために、不公平感はそこまで生まれないという点があるのです。

(もう一つに、乳幼児加算には3歳未満というような生年月日の明示された区切りがあり、保険証を提示する以上“乳幼児隠し”ということは不可能でもあるため、「そういう制度なんだ」と自然に納得してしまっているという点もあるような気がします)

受診の敬遠を避けるために、広い議論を

近年の研究により、病院での自己負担額の大小が通院の頻度にも直結するとする説もあります。

妊婦加算に限らず、同じような批判の対象となりうる診療報酬が今後また出てくることは、医療制度の仕組みからして大いにありえます。そうした点数の割を食い負担を強いられた人が診察に行くのを止め、結果として国民の健康が損なわれるということがあってはいよいよ本質が消え失せてしまいかねません。

「そもそもなんでこんな制度ができたんだ」という根本的な部分を問う人もまだまだいます。診療報酬改定までに議論されてきた医療業界を取り巻く情勢など、背景を広く理解してもらわないことには医療の現場が苦しい思いをさせられるだけで終わってしまいます。

子ども医療費助成のような制度の法整備も叫ばれていますが、時間と予算が掛かり早急には難しいということも言われているようです。いずれにしても、「患者の負担が増える」ことだけを見て批判がなされ、それをもってすぐに凍結・廃止というのは性急だと思います。幅広い議論で、実りのある方向に向かってほしいものです。

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